『赤き夢魔の話 第一巻』
これは、クロノアシリーズでほぼ無限数存在するであろう『ムゥ』に焦点をあてた、
クロノアがまったくと言って良いほどでてこない小説です。
クロノア目当ての人は、読んでも意味がないと思います。
もう一つ。
この小説内でのムゥが、イメージor設定と違う、と言われても、
私にはどうしようもないです。てか、どうもしません。
その辺を考慮の上、読んで下さる事をお願い致します。
〜目次〜
┣━◎VISION 0 〜考察〜
┗━◎VISION 1 〜蝶々〜
――VISION 0――
〜考察〜
丸い身体に、兎のような耳。
体と同じくまん丸な目をしていて、短い足でひょこひょこと歩く。
手には鋭い爪があるが、使われる事はまず無い。
彼らは、『夢魔』だ。
夢…主に悪夢を運ぶ、精霊達。
『悪夢は悪夢であってそれ以外であってはならない』という教えを受け、そして夢を管理する。
赤い体色をしてなんの能力も装備も持たない最下級の夢魔を、我々は総じて『ムゥ』と呼ぶ。
ムゥは夢の異常時に最も多く出現し、最も夢に帰りやすい。
自らが配属された夢が、異常な変化を始めた時。その場合、その夢には必ず『異なる夢』が入りこんでいる。
故意にしても偶然にしても、彼らにとってのそれは敵以外の何者でもない。
それゆえに、問答無用で排除しようとするのだが、
翼を持つフラムゥや、樹上生活によって異例の素早さを手に入れたムゥマンキー等とは違い、
何の特技もないムゥは、文字通り身を呈して敵の進行を阻止するのだ。
しかし、前述の通り彼らは『最も夢に帰りやすい』のだ。
お互いが強くぶつかっただけでもはじけ、消えてしまう。
それはつまり、異なる夢と出会った時の彼らの生存率が低い、という事を意味している。
彼らに命という概念があるのかどうかは知らないが、それをあまり重要視してないのは確かである。
一番重要な事は、『夢の安定』なのだから。
――VISION 1――
〜蝶々〜
涼やかな風が吹く村。
音もたてずに青白く輝く渦が生まれて、何かを吐き出す。
ムゥゥ、と可愛らしい鳴き声と共にぴょんと跳ね、着地する。
今、この場に召喚された『ムゥ』だ。
それは、ここに異夢が存在している事を意味している。
しかし、ムゥは持ち場からは決して動かない。
自分から、異夢を探し出して、攻撃するような事はしないのだ。
自分が生まれた場所の周りをうろうろして、
そこに『異常』が見受けられたら、攻撃する…これが、彼らの行動パターンだ。
行動パターンなのだが。
ひらひらと舞う、大きな美しい羽を持つ、リボンの結び目のような昆虫…この夢では『蝶々』と呼ぶ。
蝶々を見つけたそのムゥは、それを追いかけはじめた。
だが、追いかけても、追いかけても蝶々は休もうとはしない。
ムゥは、それに何時の間にやら夢中になっていたようだった。
持ち場から、ムゥは離れていった。遠く、遠く。
音もたてずに青白く輝く渦が生まれた。
気付けば、そこは光り輝く鉱石が壁一面にきらめくホールだった。
採掘場、決してあの場所から近くはない。
別の場所に生まれたムゥが自らの力だけでここに来た事は、
今までに一度だってなかったのだ。
ムゥ?と疑問符をかかげ、周りを見渡す。
知らない場所だが、不安にはならない。彼らに、不安という感情は…ない。
すると、あの蝶々が近づいて来てムゥの頭に止まった。
壁に埋まった鉱石の光が強くなる。
強くなって、色を変えてゆく。
ゆったりとグラデーションするそれは、オーロラのようだった。
蝶々がムゥの頭を離れて、少し上で静止する。
そして、消え始めた。
それを見ていたムゥは、驚いてそれに向かって手を伸ばす。
届かない…届かない…
ムゥーッ!
叫び声がこだまする。
それでも、届かない…届かない…届いた!
ムゥの足が、地を離れている。蝶々が彼を引っ張って飛んでいるかのようだ。
両手が、蝶々と同じ様に透けて行く。
「るーでぃすふぃぁ…るぃむ」
この夢では、ありえない言葉だった。
まさしく、それは異夢だった。ムゥは、笑顔を作る。
鉱石のライトが消えて行く。
全て消えた時、そこには何もなかった。
涼やかな風が吹く村。
音もたてずに青白く輝く渦が生まれた。
使命に消えたムゥの持ち場に、
ムゥゥ、と可愛らしい声と共に現れた、新たなムゥ。
『自分の』持ち場をうろうろと歩き回った。
蝶々は、そこには居ない。
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