海を越え、雑踏を抜け、雲へと一層近づいて。
貴方の家はこの辺り。扉は隠れて見えません。
大事に持ってきた手土産は滅茶苦茶に潰れて、
皆が写った写真も、泥に塗れてしまいました。
この口だけが語る土産も
この口だけが語る皆も
それさえ届かぬ場所へと追われた貴方に
この口と
土産と
皆を届けるが為に
ここまでやって来たのです。
土産は形さえ解からず
写真は色さえ解からず
それでもこの口だけは
必ず届く事でしょう。
必ず、届けるでしょう。
貴方を近くに感じるのです。
あの扉も、きっとすぐ側に在るのでしょう。
叫べば貴方に届きそうで、
それでもこの口を壊すまいと
私はずっと口を閉じて探しています。
貴方に全てを喋るには、
少しも欠かせる訳にはいかないのです。
それほど永く、それほど遠く、
あの場所は輝いています。
きっと貴方もまだ、
強く輝いている事でしょう。
雪の下、
枝の端、
空から太陽、星の光
この場所もあの場所に劣らず
全てが輝いていて、
その全てに触れて。
ついに口の周りで、
白雲が広く散りました。
慌てて結びなおして、
探し続けます。
欠けてしまいました。
貴方に会えた、その時に、
この口は。
この口はどこまで――。
目の端に氷が増えて、
口を使わない叫びが、
身体の中に響きました。
――貴方の扉は、どこですか――
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