――オールマイティは目立たない。
目立たないが、穴を塞ぐのに役に立つ。
だが、もし周りに一切穴の開く心配の無い場所にオールマイティがいたら?
それはただ居るだけ、になりかねないのではないか。
……という、あの頃抱いていた疑問に最近答えが出てね。
一見無駄に見える無破損の中のオールマイティ。
しかしそれには当時の私が考えつかないほど重要な意味があったのさ。

人は、どうしても万が一を考える生き物でね。
例えどんなに壊れないと表面上信じ込んでいても、
「完全」に不信感をもつように創られた我々は決して真のゴーサインを出さない。
せっかく誰よりも鋭利な物を持っているのに、
わざと少しだけ、自分にも分からないくらいのほんの少しだけ鈍らせて放つのさ。
実に勿体無いことだ。そうだろう?
そのほんの少しがあれば……ん? ほら。ちょっとアレを見て。
あの人、数分前から必死に木に引っかかった風船に手を伸ばしてるんだけど、
残念。数センチ足りないようだ。
そこのでっぱりに足をかければ届くと思うんだけど……ま、そのうち自分で気付くだろう。
教えてあげない方が、そっちではらはらしてる女の子に良い格好できるだろうしね。
で、だ。そのほんの少しがあれば、
ああいう状態でもしっかり手が届くのさ。
どうだ、勿体無いだろう?

本気を出さない彼等は万全を欲しがっているんだ。
心の奥底、底の底、本能のマグマが眠ってる場所でね。
だが、自分だけが持つ完全は信じられない。
どうする? と、ここでオールマイティの出番なのさ。
壊れてもすぐ穴が塞げる。
こういう保証ができると後は速いもの。
一回だけなら大丈夫、は人を無防備にするらしいね。
ただでさえ鋭利なものを、さらに研いで研いで研いで!
必殺の一撃さ。素晴らしい物が見れる。
無破損内のオールマイティはこの為に存在していたんだ。
自ら進む力に飢えている、臆病な天才を奮い起こす為にね。

ただ居るだけ、は悪かったんじゃない。
ただ居るだけが最高の仕事だったのさ。

あぁぁ、あの人、風船を飛ばさせてしまったよ。
ぐんぐん小さくなってく。実に気持ち良さそうだ。
あの人は……見なかった事にしておこうか。
損な役回りっていうのは、各地に一人は居るもんだ―― 


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