「確か…ここ…」
そういって崩れ落ちるレイム、彼らの目の前にはきらびやかに光り輝く町があった。

               クリスタルタウン

「ヒョーガ様!」
「ぅ…ぅぅ………あ…ら?こ…こは…」
「良かった…おい!ヒョーガ様が目を覚まされたぞ!」
ヒョーガが寝ているのは修道院のベッド、ここは天井の装飾から言ってどうやらヒョー
ガの修道院のようだ。
「みな…さん?」
「ひょーがさまぁ」
「ひょーがさまだいじょうぶ?」
ヒョーガの寝ているベッドに小さな子供たちが群がってくる、ヒョーガは弱々しく…そ
れでもしっかりとした微笑みを浮かべると近くにいた子供の頭をなで始めた。
「大丈夫です…よ、私は、少し魔獣の毒…吸い込んだだけです」
「解毒剤は投与し終わってます、後は休むだけですよ。坊主たち、ヒョーガ様のために
も向こうに行ってな」
子供たちは「はぁい」と返事をすると部屋を出て行った。
「バルドルさん」
「何でしょう?」
この、先ほどから指示を出しているバルドルという男はこの町の医者だ。
ここはクリスタルタウン、ヒョーガの納める修道院を中心に栄える東地方の裕福な町で
ある。
「私をここまで運んでくれたのは…誰ですか?」
「あれ?ヒョーガ様、お一人で戻られたんじゃないんですか?」
バルドルは首をかしげて聞き返した、そんなはずはない、確かに自分は森でバタフライ
の毒を吸い込み気を失ったはずだ、そう、そしてそこで出逢ったのは…
「なるほど…そういうことですか…」
「はい?」
「私ともう一人、赤い髪の少年が居ましたね?」
「そ、そんな少年はどこにも…」
「隠しても無駄です、この町の人たちが彼のことをよく思っていないことは知っていま
す、ですが、追い出しただけでは何の解決にもなりません…うぅ!」
「だ、だめです!起きちゃ」
起きあがろうとするヒョーガをバルドルは半ば無理矢理押しとどめた。
「体のあちこちの火傷があるんですよ!」
「それがどうしたというのですか?!」
「ヒョーガ様はこの町で一番大事なお方です!ここでみなを心配させては…」
「だからそれがどうしたというのです!!」
バルドルは驚いた、いや、彼でなくともこのように激怒したヒョーガを見たことがある
ものはいないだろう。
「彼がここで何をしましたか!私が町で最も大事だというのならこの町を守ったのは彼
です!5年前もそうだったでしょう?!!第一、人の命に優劣など有りません、いつも
言っているでしょう?!」
「ヒョーガ様、そのことは…」
「すぐに彼を連れ戻しなさい」
「え…」
「わかりましたね?2度は言いません」
「は、はい…」
火傷の痛みなど無いような…そんな錯覚を起こさせるほど厳しいヒョーガの口調は条件
反射的にバルドルに回れ右をさせた。

「レイム、ありがとうございました」
「いえ…礼を言われるほどのことはしていないのですが…」
「そんなことはありません、あなたが運んでくださらなければ私はあそこで朽ちていた
でしょう」
「いえ…」
「レイム、あなたはなぜこの地に?」
レイムはいいずらそうに俯いた。
「…この地にあるという"書"を手に入れるためですか?」
そのときレイムの肩が震えた。
「そうですか…あなたは私との約束を忘れたのですか?あの日の…」
「忘れてなど…いません!」
「ではなぜ力を求めるのですか?その力のせいで、あなたはこの町で迫害を受けている
のですよ?」
「…この町をであと、南に行って、そこである少女に出逢いました」
「………」
「その少女は力を欲しがっていました、なぜかは話してくれませんでしたが、彼女の理
論に、俺は逆らうことができませんでした」
「…………」
そしてレイムは意を決したようにヒョーガを見据えた。
「『必要な力を手に入れて何が悪い』」
「………」
「そして…俺はある少年にも出逢いました…」
「少年ですか?」
少しだけ、ヒョーガは驚いた、あれほど人付き合いが苦手だったレイムは旅先で二人の
男女と知り合っていたのだ。
「その少年には…大事なものが欠けていました…」
「大事なもの?」
「彼には記憶がありませんでした、自分の名前も、生まれた場所も何もわからず、ある
時気付けば草原にいた…とのことです」
「あなたも…でしょう?」
慈愛に満ちた眼で、その視線で優しくレイムを包むヒョーガ、レイムは、それをふりほ
どくかのように激しく首を横に振った。
「俺は違います…俺は…あいつほど強くない…俺は、俺の意志で忘れて…俺が必要なか
ったから覚えてないだけで…」
そしてレイムは語り始めた、ヒョーガと離れてからの5年間を…
フィルスのこと…
ワテルドのこと…
旅のこと…
今まで見た南のこと…
今目指している場所…
すべてを…

「俺は…あれから変わっていない…」
「あなたは変わりましたよ、少なくとも、5年前とは…」
「だが、俺には目的があってもそれを達成する力がない!その証拠に…ヒートクラッシ
ュやあの技の後遺症である高温であなたにそんな火傷を…」
「…………私との誓いが、貴方を苦しめているのですね…」
「そんなことは…」
「では、今度は少し変えてみましょう」
「?」
「そうですね…今度は『守るための力』を目指してみましょうか」
「守る…ため?」
そこでヒョーガは人差し指を立てレイムの前に出し、レイムの言葉を止めると少し笑っ
て…
「よく考えればおかしな話です、同じ力を持つ私がこの町にいることが出来て、同じ力
を持つ貴方が駄目なんて」
「俺にこの町に居ろ…と?」
「そうです、そして貴方には手伝って欲しいことがあるのです」
「何を…ですか?」
「それは…すみません、ちょっと休んでから話しましょう」
「は、はぁ」
「では、お休みなさい」
そう言うとベットに潜り込み寝てしまった。
つーか寝るのはや!
「……………………俺、やっぱり居場所無いかも…」
どうして良いか分からず部屋の隅でうずくまるレイムであった。


NEXT――フォースバトル〜ユメニミタアスノミライヘ

後書き
泥棒三人組の中では一番大人だと思われていたレイム君。
彼だって子供です(強調
て、言うかヒョーガ様の前だけ子供です、ヒョーガ様に『様』は外せません(ぉぃ
レイム編はこれにて終了、ほんとはもっと色々書きたかったけどラストまでさっさと行
きたいのでこれにて終了、次にレイム君が登場するのは分岐していた道が一つに戻ると
きっす。
それにしても…かなり強引ですね〜ヒョーガ様、レイム君、有無を言う暇も無し。



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