エストレーラ考古学部

第五話【使者】





エンキドゥに続いて走って来た三人は、ダークマター二匹に襲われている三人―――カービィ、アーギア、アグードを見つ
けた。

「カービィ!!」

「み、みんなっ!!」

「コラ、てめぇら!!卑怯だぞッ!!!精神攻撃なんか!!!」

ダークマター達はミト達に視線を移すと、苦々しげに吐き捨てる。

「…邪魔な人間どもが。よかろう、全員この場で逝かせてやるわ!!!!」

≪待ちな≫

映画館で聞こえる音のように、誰かの声がした。

「誰ッ!?」

ミトが辺りを見回す。

≪分からんかッ!お前達二人で勝てる相手じゃないってことぐれェ!!≫

「…分かりました」

驚くほどすんなりと声を聞き入れたダークマターは、空気に溶け込むように消え去った。

カービィとアーギア、アグードが前線に立ち、その後ろにはミト、ルーヴィ、アレグが構える。

暫くして、一人の男性が唐突に姿を現した。余りの唐突さに、ミトは「おおぅ!!」と悲鳴を上げたほどだ。

「ふーん、アンタ達がカービィ君と一緒にいる奴らか。…………」

男はカービィ以外の全員を点検でもするように眺め回していく。

「なっ、何だよ!」

ルーヴィが非難の声を上げると、男は突然笑い出した。夜の闇のような黒い短髪が揺れる。

(オレ、アイツ嫌いだ…行動が予測不可能なんだもん)

ルーヴィがそっとミトに囁く。

(いーんでない?カッコいいし、行動が予測不可能だと退屈しないし!)

(む…)

「いや、失礼失礼。そこの子供と機械鷹はともかく…他の奴らは全員普通の人間じゃないか」

「ほお?」

アレグが怒りを含む笑みを浮かべる。

「…あ、また失礼。アンタは召喚術士だっけ?」

「そうそう」

満足そうに頷くアレグを見て、ルーヴィは大袈裟な溜め息をついた。

「そいつら以外は普通の人間だろ?俺はてっきり、上級魔術師とか伝説の剣士の子孫とか、そーゆう奴らがいんのかと
思ってたのに…とんだ見当違いだったなあ」

「なぁんだとー!!普通の人間、普通の人間って…聞いてりゃー調子に乗っちゃってさ!!あんただって…」

「残念、不正解。俺様は普通の人間じゃないんだよ〜ん」

男はそう言うと、着ている黒い戦闘服の襟首部分を下へグイッと下げた。

「それは…!!」

「きゃー、やだぁ!!アタシはそんな変な趣味ナイよぉお!!!」

ミトは両手で目を塞いで赤面している。

「さっすが、召喚術士様。これが何だか、お分かりのよーですな」

「おい、アレ何だ?」

「……葉脈だ」

「よぉみゃくぅ??」

ルーヴィは男を振り返る。

「そ。よ・う・みゃ・く。わっかるっかな〜?坊主」

「ふざけんなァーッ!!!!オレにだってそれくらい分かるわーッ!!!!」

憤慨。

「葉脈は葉っぱにあるアレだろ!!!それくらいオレでも…………はっぱ………」

「気付くの遅いぜ、べいべ。それじゃ、葉脈のある俺は何でしょーぉか?」

おどけた調子で男が問う。

「―――聞いたことがある…遥かな昔に植物を特殊な方法で遺伝子操作して、人造人間を作り出す方法があるとか何と
か」

「その通りだよ、召喚術士殿。…俺はナイトメア軍第四隊隊長、植物人造人間…」

「えーっ!人造人間!キャ○ャーンとか、キカイ○ーとかのお仲間さん!?」

「いやいやいや。話を遮って話す奴はいい女にならないぜ」

「大丈夫、こいつもともといい女じゃねぇから」

「ぶーっ!!何よソレ!!!」

「とにかくな。人造人間、デルトール!!いざっ、尋常に勝負勝負…」




…………。




「オイ、何だこの沈黙は」

デルトールが口を開く。

「エ、いや。あまりにも堂々としてるので、かえってやりにくい」

アレグが言うと、カービィが前に乗り出す。

「…ダークマターじゃない手下なんて、初めて見たよ」

「むっ、カービィ!!我々の目的は貴様一人…いや、一匹か?…とにかく、死ねーぃっ!!!」

デルトールが地面に思い切り拳を叩き付けると、見たこともない巨大な植物が数十本も生え出した。

「ひえぇ!何コレぇっ!」

「俺の能力、植物操作。植物人造人間にしか使えない技だぜ♪」

うねうねと揺らめく棘の生えた太い蔓は、デルトールの合図で一斉にカービィ達に襲い掛かる。

「わーっ!!」

「のわっ!!」

「うわぁ!!」

逃げ惑う三人。

「あれ!?先生はっ!?それに(何故か登場シーン極少の)アーギア君はっ!!?」

「そーいや…あ!あっこ!!」

ルーヴィの指差す方向には、呪文を詠唱するアレグと、蔓を必死に防ぐアーギアの姿。

「えいっ、はぁっ、そりゃぁあっ!!!」

バシッ、バシッ、ザシュッ!!!

「師匠、まだですか!?」

「待て!!どうも集中出来なくてな、呪文を間違えてしまうんだ!!えぇと…」

手を額に当て必死に思い出そうとしているアレグ。ふと、思い出した様子で詠唱を開始した。

「『この指輪は御身の耳、この指輪は御身の目、この指輪は御身のく…』」

「師匠、それは別の召喚術士の詠唱ですッ!!(びしぃ」

「はぐっ!し、しまった…ううむ…そーだっ!!よし、あと少しの辛抱だ!!アーギア!!!




『汝、自然界に君臨せし大いなる災厄の一つ。

龍の如き荒れ狂う風を従え突き進む者なり。

父なる大地に生えし木々を奪い取り、水を吸い上げ、全てを喰らい薙ぎ倒す者なり。

我、汝に請う。…我に汝の荒れ狂う龍を授けよ!!!』





来たれ、<嵐神アダド>!!!!』





アレグが人差し指と中指をくっ付けた状態の手で天を指すと、そこに一筋の光が凄まじい勢いで集約する。

「…ほお、あれが召喚術…初めて見たな」

デルトールが感嘆の声を漏らす。

アレグの指に集約した光はやがて巨大な人になった。

「ミト、ルーヴィ、球体君!!こっちへ来るんだ!!!」

呆然としながらも呼ばれた三人は彼の方へ向かう。

「行け、アダド!!汝の龍を我に刃向かう闇の者へ差し向けよ!!!」

指をデルトールに指すと、人の形をした光は両手と思しき部分をデルトールに向ける。

「む。来るか…?」

デルトールは身構える。武器はないが。

向けられた両手から、風の龍が凄まじい咆哮を上げながらデルトールに向かう。

「うお!」

合図で蔓達に己の身を守らせるが、風の龍は一向に消え去る気配を見せない。

「ぐっ…く、くそっ……今日はコンディションが悪かったよーだ!!やっぱ朝食に安売りしてた肥料なんか食うんじゃなかっ
た!!」

負け惜しみを吐き捨てると、彼は自らに蔓を巻きつけて消え去った。

「………終わった、のかな?」

ミトが恐る恐る声を出す。

「………終わった、んじゃねえのかな?」

「………終わった、んでしょうね?」

「………終わった、んだよね?」

ルーヴィ、アーギア、カービィの三人も恐る恐る声を出す。

「すっ…………すっごいや、先生!!!」

「ああ、見直したぞアレグ!!!」

「師匠の弟子になってよかったって思いました!!!」

「僕もあんなの初めて見たよ!!!」

四人は口々に突っ立っているアレグへ声を掛ける。…が、様子がおかしい。

遠くを見るような、光が宿っていない目で何処へ視線を向けるともなく、ただ突っ立っているだけなのだ。

「…先生?」

ドサッ。

つんつんとミトが突っつくと、そのまま彼は背中から地面に倒れ込んでしまった。

「わああーッ、師匠!!!!!」 

アーギアが飛びつく時には、アレグは瞳を閉じて安らかな寝息を立てていた。

「…なんで寝ちまったんだ。疲労困憊か?」

「うぃーす、諸君」

聞き慣れぬ声に振り返ると、そこには見知らぬ少年が一人。少なくともアレグの次に年長者だろうということがよく分かる
風貌だった。

巨大な葉巻型の潜水艦らしき絵が描かれた(これで分かればスバラシイ)黒い半そでシャツを着、どこにでもあるような極
普通の紺色のジーンズをはいている。

「…にまん…??…あんだーざしー???」

「おう、俺の尊敬する船だ。そんなこたーどーでもいい。俺は君達に会いに来た。特に、そこでお眠りになっていらっしゃる
召喚術士サマに」

「アレグを殺す気かッ!!?さては貴様もゼロとかゆー奴の仲間!?」

「ちげえちげえ。早とちりすんなや。俺はリタロ。さっき君達の先生が召喚した『粘土の山男エンキドゥ』『嵐神アダド』他い
ろいろな神レベルの『ヒト』を管理してるもんでっす」

リタロと名乗った少年はぺこりと軽くお辞儀をする。

「…管理ってオマエ、神レベルのものをどーやって管理してんだよ??」

「『ヒト』達は一人しかいないのに同時に何体も別々に召喚出来るようにするのが俺の仕事なワケよ。分かる?オリジナ
ルからコピーを何体も造るんだよ」

「へえ!!神レベルのヒトタチをコピーするなんて、凄いんだ!」

「いやぁ、てゆーかソレが俺の仕事だし?」

「ところでそのワニみたいな潜水艦は?その下に書いてある『あんだーざしー』てぇのはー…」

「(無視)先生サマは今、自分の精神力を上回る『ヒト』を召喚しちまったんな。何故か分かるか?」

「えぇー…何でだろ…」

ミトは暫く考え込むが、カービィがすぐに答えた。

「大事な人達を守る為…?」

「そう、ソレよ!いいか?いくら皮肉を言い合おうと喧嘩しようとな、可愛い教え子に代わりはねえ。君達を守る為なら、こ
の人は自分の命だって…下手すりゃ天国行きの切符だって犠牲にしちまうだろーな」

「…先生…」

四人はしんみりとする。アレグがそこまで深く考えてあの嵐神を召喚していたとは、到底思えなかったからだ。

「…ねえ、リタロ。アレグは…助かるの?」

「まあ、眠り込むだけなら二、三日もありゃ回復すんだろ。と、こ、ろ、でー…俺もついていきたいんだけド♪」

悪戯っぽく微笑みながら、リタロが聞いた。

「えっ!!何ソレ!?管理は!?」

「あー?いーいー。奴隷的な奴に任して来たから」

「ど、奴隷…?」

「そ。フィクスに。だから俺はあの面倒な管理仕事をやらなくてすむんだよ〜ん」

「…はぁ。それより、先生を何処か休める所に運ばないと」

「何か運べるもの、ありませんでしたっけ?」

「…ない。車、向こうにおいて来ちまったし」

ミト達が話し合っているのをよそに、リタロが近くで何かを擦っている。金色で、取っ手があって、明かりの代わりにする『ラ
』で始まる物体を。










さて、何が出て来るのでしょうねえ。

楽しみだなぁ。

管理人君の擦っているものの正体も気になるし…

闇の集団がいるとこも気になるしね。










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☆俺流用語辞典☆


上級魔術師とか伝説の剣士の子孫とか…出せるもんなら出したかったさ。はッ。←笑

変な趣味…どんな趣味だ。

植物を特殊な方法で遺伝子操作して…上手く説明出来ない理由→筆者の頭のせい

キャ○ャーンとか、キカイ○ーとか…後者はともかく、前者は実写映画にもなったから分かるかも。

デルトール…新キャラ出しまくる癖止めれや(汗)植物人造人間のクセして下手な人間より人間らしい。植物を武器とする
。某巨大リレー小説のキャラ様とは一切関係ありませんじょ。

別の召喚術士…彼が出て来るドラマCD聴かなきゃ分からないネタ。絶版中だからネットで注文しないと手に入らな(ネタ
的に危険な為省略)

嵐神アダド…嵐司ってます。忙しいです。神様です(今更)とある神話から拝借させていただきました。

安売りしてた肥料…軍の食事ってそんなもんなの?

ワニの様な潜水艦らしき絵…ごめん。これ書いてた時東京にある超有名テーマパークの海の方行って来てたもんで。船
長の声イケてた。

リタロ…この調子でいくと十話くらいで酸素不足になってるだろーに。召喚ビト管理人。まぁ、その、随分前から作ってた…
そのー(以下略)




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